健康情報を正しく理解する力:怪しい情報から身を守るための実践ガイド
現代社会に溢れる健康情報との向き合い方
私たちは日々、テレビやインターネット、SNS、そして身近な方々との会話を通して、様々な健康情報に触れています。「これを食べれば病気が治る」「この運動をすれば健康になる」といった魅力的な情報から、「最新の研究で分かった」という専門的な話まで、その内容は多岐にわたります。しかし、これほど情報が溢れているからこそ、「どれが本当なのか」「自分にとって正しい情報は何なのか」と迷ってしまうことはありませんか。
特に健康に関わる情報は、私たちの生活や安心に直結するため、その信憑性を見極める力が非常に重要です。この度、「情報リテラシー向上委員会」では、皆さまが健康情報を賢く判断し、安心して日々を過ごすための一助となるよう、怪しい情報から身を守るための具体的なポイントと実践的な方法をお伝えいたします。
なぜ健康情報の「見極め」が大切なのでしょうか
健康に関する情報には、時に注意が必要なものが含まれています。その理由として、以下のような点が挙げられます。
- 科学的根拠の薄い情報が多い: 個人の経験談や特定の文化に基づくもの、あるいは全く根拠のない情報が、あたかも科学的な事実であるかのように語られることがあります。
- 商業目的の誇大な広告: 特定の製品やサービスを販売するために、効果を過剰に宣伝したり、不安を煽るような表現を用いたりするケースが見られます。
- 誤解を招く表現: 本来は特定の条件下でのみ当てはまる話が、一般的な事実であるかのように伝えられ、誤解を招くことがあります。
- 情報の更新がされていない: 医療や健康に関する知識は日々進歩しています。古い情報がそのまま残っていたり、新たな知見が反映されていなかったりすることもあります。
これらの情報に惑わされると、間違った判断をしてしまったり、不必要な不安を感じたり、場合によっては健康を損ねてしまう可能性もございます。だからこそ、情報を鵜呑みにせず、立ち止まって考える「批判的思考」が不可欠なのです。
信頼できる健康情報を見分ける5つのポイント
それでは、具体的な情報の見極め方について、5つのポイントをご紹介します。
1. 情報源はどこか、誰が発信しているかを確認する
情報が「誰」によって「どこ」から発信されているかは、その信頼性を判断する上で最も大切な要素の一つです。
- 信頼できる情報源の例:
- 公的機関: 厚生労働省、国立がん研究センター、国立循環器病研究センターなど、国や公共の利益のために活動する機関の情報は、一般的に信頼性が高いと考えられます。
- 専門家や専門機関: 大学の研究機関、学会(例: 日本内科学会、日本糖尿病学会など)、専門医などが発信する情報は、専門知識に基づいているため信頼できます。
- 医療機関: 病院や診療所、薬局などが提供する情報は、直接的な医療行為に関連しており、比較的信頼性が高いと言えるでしょう。
- 注意が必要な情報源の例:
- 匿名ブログや個人のSNS投稿: 個人の体験談や意見は参考になることもありますが、科学的な根拠が不明確な場合が多いです。
- 根拠不明なまとめサイト: 様々な情報を集約しているサイトの中には、情報源が不明確であったり、偏った情報が掲載されていたりすることがあります。
- 広告目的が前面に出ているサイト: 特定の健康食品やサプリメント、美容製品などの販売を強く促すサイトは、情報の公平性に欠ける可能性があります。
情報に触れたら、まず「これは誰が、どんな目的で発信しているのだろう?」と考えてみてください。
2. 科学的根拠があるかを確認する
「〜に効く」「〜が改善された」といった健康効果に関する情報には、科学的な裏付けがあるかを確認することが重要です。
- 「科学的根拠(エビデンス)」とは?
- 「個人の体験談」や「昔からの言い伝え」ではなく、多くの人を対象とした研究(臨床試験など)によって、その効果が客観的に示されていることを指します。例えば、「二重盲検法」という、効果の思い込みを排除した厳密な試験で効果が確認されているかなどが、判断基準の一つとなります。
- 確認のポイント:
- 「〜という研究で明らかになった」「〜学会が発表した」といった記述があるか。
- その研究がどのような規模で行われたのか、誰によって行われたのか。
- 「個人の感想です」と小さく注釈があるだけのものは、あくまで個人的な体験であり、全ての人に当てはまるわけではありません。
3. 「すぐに治る」「絶対効く」といった表現に注意する
健康や病気に関して、安易に「絶対」「完璧」「即効性」といった言葉を使う情報には注意が必要です。
- 誇大広告の特徴:
- 病気が「簡単に治る」「短期間で効果が出る」と断言する。
- 「これさえあれば」「夢のような」「奇跡の」といった大げさな言葉を使う。
- 特定の医師や著名人の体験談だけを根拠にする。
病気の治療や健康維持には、時間を要したり、様々な要因が絡み合ったりすることが一般的です。どんなに魅力的な話であっても、あまりにも都合の良い表現には疑問を持つ視点を持つことが大切です。
4. 他の情報源と照らし合わせる(多角的視点を持つ)
一つの情報だけで判断せず、複数の信頼できる情報源で内容を比較・確認する習慣をつけましょう。
- 具体的な実践方法:
- インターネット検索で、同じテーマについて複数の専門機関や医療機関のサイトを閲覧する。
- テレビ番組で見た内容を、公的機関のウェブサイトで確認してみる。
- 新聞や雑誌の情報を、信頼できる健康情報サイトで裏付ける。
これにより、情報の偏りを発見したり、より包括的な理解を深めたりすることができます。
5. 情報の更新時期を確認する
医療や健康に関する情報は常に更新されています。古い情報が現在の状況に当てはまらない可能性もございますので、情報の公開日や最終更新日を確認するようにしましょう。
- ウェブサイトの場合、記事の冒頭や末尾に日付が記載されていることが多いです。
- あまりにも古い情報(数年以上前など)の場合は、最新の情報を改めて探すことをお勧めします。
日常で接する健康情報への実践的な向き合い方
テレビの健康番組を見たとき
テレビの健康番組は、分かりやすく、身近な話題が多いため、つい信じがちになります。しかし、番組の目的が視聴率獲得や特定のスポンサー企業の製品紹介にある場合もございます。
- 実践的な考え方:
- 「この方法は、本当に全ての人に安全なのだろうか?」「具体的な根拠は示されていたか?」と一歩引いて考えてみましょう。
- もし気になる健康法があれば、かかりつけ医に相談したり、紹介された成分や食品について、信頼できる情報源(例: 国立健康・栄養研究所のウェブサイト)で改めて調べてみることをお勧めします。
インターネット広告やSNSで健康情報を見かけたとき
インターネット上の広告やSNSの投稿には、「個人の体験談」や「ビフォーアフター写真」など、感情に訴えかけるものが多いです。
- 実践的な考え方:
- 「この商品を買わせようとしているのではないか?」「無料とあるけれど、その後に高額な費用がかからないか?」といった、情報の裏にある意図を想像してみましょう。
- 魅力的な「お客様の声」があったとしても、それが全ての人に当てはまるわけではないことを心に留めてください。
- 怪しいと感じたら、その広告の企業名や製品名を検索し、消費者庁や国民生活センターの注意喚起がないかを確認することも有効です。
もしも不安に感じたら:一人で抱え込まずに相談を
どんなに情報を注意深く見極めても、時には判断に迷うこともあるでしょう。また、自分や家族の健康に関わることなので、不安な気持ちになるのは自然なことです。
- 専門家への相談:
- かかりつけの医師や薬剤師は、あなたの健康状態を理解しており、専門的な立場からアドバイスをくれます。気になる情報があったら、積極的に相談してみましょう。
- 地域の保健所や健康センターでも、健康に関する相談を受け付けている場合があります。
- 信頼できる身近な人への相談:
- 家族や信頼できる友人など、身近な人に相談することで、客観的な意見を得られたり、不安な気持ちを共有できたりします。
情報に惑わされ、一人で抱え込んでしまうことがないよう、困ったときは周囲に助けを求めることも大切な情報リテラシーの一つです。
まとめ:冷静な視点が安心につながります
情報が溢れる現代社会において、特に健康に関する情報は、私たちの生活の質を大きく左右します。「情報リテラシー」とは、情報を受け取るだけでなく、その真偽を判断し、適切に活用する力のことです。
今日ご紹介した「情報源の確認」「科学的根拠の有無」「表現への注意」「複数情報の照合」「更新時期の確認」といったポイントを意識することで、皆さまはより冷静に、そして客観的に情報を評価できるようになります。
情報の海に流されず、ご自身の健康を安心してお守りいただくために、ぜひ実践的な見極め方を日々の生活に取り入れてみてください。私たちは、皆さまが偏りのない情報収集と批判的思考力を養い、安心して日々を過ごせるよう、これからも有益な情報を提供してまいります。